FC2ブログ
ゲーム業界タブロイド
ゲーム業界についての様々な情報を掲載しています
03 | 2021/04 | 05
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

コロプラの業績と今後
先週は、スマホゲーム会社「コロプラ」の評判があまり良くないという事について記述しましたが、今回はコロプラの業績を分析します。以下は、コロプラの創業(2008年10月1日)からの業績推移を表したグラフです。

colopl_finance.png
コロプラは2012年度までは目立ったヒット作も無く、業績は低迷していました。ですが、2013年に配信を開始した「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」が人気となり、更に翌2014年に配信された「白猫プロジェクト」が大ヒット、コロプラの業績は大きく伸びました。2016年には、白猫プロジェクトのスピンオフ作品「白猫テニス」もヒットし、コロプラの売上高は過去最高の847億円を記録しました。

ちなみに、カプコンの2016年度の売上高は872億円なので、コロプラとほぼ同等です。また営業利益ではカプコンが137億円、コロプラが319億円なので、その差は歴然です。創業から10年も経っていないコロプラが、モンハンやバイオなど多くのヒット作を持つカプコンと同等以上の業績を残しているのです。スマホゲーム市場でヒット作を生み出せれば、極めて大きな利益を得られるという事が改めて分かるデータです。

しかし2017年以降、コロプラの業績は右肩下がりを続けています。看板タイトルの白猫の人気がピークを過ぎた事に加え、新たなヒット作を生み出せていない事が、業績低迷の理由です。特に顕著なのが利益率の低下で、全盛期には40~50%もあったところ、2019年度は7.6%まで落ち込んでいます。

コロプラは、自社の売上構造をミルフィーユ戦略と呼称しています。人気作もいつかは売上が落ちるという事を踏まえ、新規作を次々と生み出して過去作の減少を補い、それぞれが重なって全体での売上を伸ばして行くという戦略です。お菓子のミルフィーユが、生地を何層にも重ねて作られる事になぞらえた名称です。以下は、コロプラの決算資料から引用したミルフィーユ戦略の実績グラフです。(画像クリックで拡大)
mille-feuille.png
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3668/ir_material_for_fiscal_ym/72176/00.pdf

こうして見ると、コロプラのミルフィーユ戦略はあまり上手くいっていないと感じます。近年は白猫(FY2014)の売上が大幅に落ち込んでいますが、新規タイトルでその減少分をカバー出来ておらず、ミルフィーユの一枚一枚がかなり薄くなっています。スマホゲーム市場は成功作と失敗作の差が激しいのが特徴であり、小粒タイトルがいくら集まったところで、白猫のようなヒット作1本にも及ばないのです。ミルフィーユ戦略という狙い自体は悪くないと思いますが、残念ながらコロプラにはそれを実現出来るだけの能力は備わっていないようです。

とはいえ、2019年度はドラゴンクエストウォーク(コロプラ開発)のおかげで、4Qの売上が大幅に伸びています。ドラクエウォークの配信開始が2019年9月12日で、コロプラは9月決算なので、実質的な稼動期間は20日程度しか無いにも関わらず、グラフのオレンジ色が大きな層になっています。業績が悪化していたコロプラにとって、ドラクエウォークのヒットは天の助けだったと言えるでしょう。しかし、既にドラクエウォークの勢いはかなり落ちていますし、今後コロプラの業績にどれだけ貢献するかは未知数です。

ところで前回、コロプラはゲームに関する特許を数多く申請して、ライセンスビジネスで稼ごうとしていると書きました。実際、コロプラはここ数年で多くの特許を取得するようになっていますし、2017年にはカプコンとクロスライセンス契約を結んだ実績があります。

コロプラの年間特許取得件数
20111
20120
20130
20143
20156
201678
2017124
201897
2019136

ですが、コロプラとのライセンス契約の発表があったのはカプコンぐらいで、それ以外のメーカーの話はあまり聞こえてきません。コロプラの決算報告を見ても、特許で大きく儲けているという報告は見受けられません。単に発表していないだけなのかもしれませんが、コロプラの特許で儲けるという戦略は空回りしているという印象です。

コロプラはVRに関する特許も120以上取得していますが、VR普及のカギだったソニーのPSVRが大コケした事で、コロプラの目論見も失敗に終わったのです。また先週も記事にした通り、コロプラは任天堂に特許権侵害で提訴されており、これまでの流れを見る限り裁判で敗訴する可能性は極めて高いでしょう。結局のところ、コロプラの特許戦略は業績に全く貢献していない(むしろマイナス)ように感じます。

ミルフィーユ戦略の失敗、特許戦略の不発、敗色濃厚な任天堂との裁判、今後のコロプラは中々厳しい状況に追い込まれていきそうです。

スポンサーサイト



コロプラはゲーム業界の問題児?
コロプラは2008年に設立されたスマホゲームメーカーです。代表作としては「魔法使いと黒猫のウィズ」「白猫プロジェクト」などがあり、また昨年配信されたスクウェア・エニックスのタイトル「ドラゴンクエストウォーク」の開発にも携わっています。スマホゲーム市場では、「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー)や「モンスターストライク」(ミクシィ)など、大ヒット作を生み出したメーカーはいくつかあります。しかしコロプラのように、複数のヒット作を持つスマホゲームメーカーは中々珍しいです。スマホゲーム市場において、コロプラは比較的成功している部類に入るメーカーだと思われます。とはいえ、ゲームファンの間ではコロプラの評判はあまり良くありません。

例えば、コロプラで一番のヒット作白猫プロジェクトは、日本での累計ダウンロード数が1億を突破した事を大きくアピールしていました。ですがこれはリセマラを含めた数であり、実際にユーザーが1億人いるわけではありません(人口約1億2000万人の日本でユーザー数が1億人もいるはずがないです)。

リセマラとは、リセットマラソンの略称です。多くのスマホゲームでは、開始直後にガチャを数回無料で引けるサービスがあります。そこでレアなキャラやアイテムを入手出来ると、その後のゲーム進行が大幅に楽になります。もしガチャの内容が良くなかった場合に、ゲームを一度アンインストールし、再度インストールし直せば、再び無料でガチャを回せるようになります。この一連の流れを何度も繰り返す行為を、リセットマラソンと呼ぶのです。

当然ながら、いくらリセマラが繰り返されても、メーカー側には一切利益が発生しません。つまり、リセマラを含んだダウンロード数など、1億だろうと10億だろうと全く無意味なのです。こんな虚構の数字で、自社のゲーム人気を水増しするというのが、コロプラのやり口なのです。

またコロプラは、2019年6月12日に配信を開始した「最果てのバベル」で、セールスランキングを不正操作した事が明るみになりました。最果てのバベルのセールスランキングを上げるために、取引先に850万円を渡して課金するよう依頼した事が判明し、大炎上しました(こんなわずかな金額でランキングに影響するのか疑問ですが)。なお、こうした不正行為が影響してか、最果てのバベルは2020年4月30日にサービスを終了する事が発表されています。

そして近年、コロプラにとって大きな問題になっているのが、任天堂との裁判です。2017年12月、任天堂はコロプラに対して、特許権の侵害を原因として「白猫プロジェクトの配信差し止め」と「44億円の損害賠償支払い」を求める訴訟を起こしています。白猫プロジェクトでは、スマホのタッチパネルを仮想の方向キーとして使う「ぷにコン」というシステムが用いられていますが、これが任天堂が保有しているプログラム特許を侵害しているという事です。このような操作方法は、様々なメーカーのゲームで用いられていますが、任天堂が特許侵害裁判を行うのはコロプラが初です。

任天堂は2004年に携帯ゲーム機ニンテンドーDSを発売する際、タッチパネルに関する特許を多数取得しています。iPhoneなどのスマホが世に出たのはDS発売以降なので、タッチ操作の特許はアップルやグーグルなどよりも任天堂が多く所有しているようです。しかし、任天堂はこれらの特許で利益を得ようとは考えておらず、事実上はどのメーカーも自由に使える状態になっています。任天堂が多くの特許を取得しているのは、誰でもその技術を無料で使えるような体制を作る事で、ゲーム業界の発展に繋げるのが目的なのです。

ですがコロプラは、任天堂が所有する特許を小手先だけ変更して、自分達の新しい特許として申請し、ライセンス収入で儲けようと企てたのです。コロプラの弁理士だった佐竹星爾氏(現在はコロプラを退社)は、ゲーム業界で特許ビジネスが重要という旨の発言を行っており、実際近年のコロプラは数多くの特許を取得するようになっています。
https://thefilament.jp/dialog/1129/

例えば、コロプラはVRについての特許も多く持っています。2016年は、様々なメディアがVR元年と持ち上げていましたが、実際はソニーのPSVRが大失敗に終わった事で、全く盛り上がりませんでした。PSVR失敗の根本的な原因はソニーの生産体制の不備でしたが、それ以外にもコロプラの特許がVRの普及を妨げた一因とも言われています。

任天堂は、他社が任天堂の特許を使う事については基本的に黙認します。ですが、その類似特許で儲けようとする特許ゴロの存在は見過ごせないのです。それが、任天堂が初めて特許侵害裁判に踏み切った理由です。

コロプラ側は、任天堂の特許を侵害してはいないと主張していますが、実際は訴訟後に白猫プロジェクトの操作方法をこっそり修正するなど対策を行っています。わざわざ操作方法を変更したというのは、任天堂の特許を侵害していた事を認めたも同然ではないでしょうか。裁判でも、コロプラは時間稼ぎを繰り返すばかりで、まともに戦う気は無いように感じます。

ちなみにコロプラは2018年、Switch向けソフトとして白猫プロジェクトを発売すると発表しました。しかしこれは、任天堂へのご機嫌伺いが目的で、実際にはSwitch版の開発なんて全く行っていないという噂です。

これまでの裁判内容を見る限り、おそらくコロプラは敗北するでしょう。昨年ドラクエウォークがヒットし、コロプラは大きな利益を得ましたが、その多くは任天堂への損害賠償支払いに消える事になりそうです。

日本ファルコムの業績と今後
文字色日本ファルコムは、1981年(ファミコン発売前)に創業した老舗のゲームメーカーです。2016年に大ヒットを記録したアニメ映画「君の名は。」の監督を務めた新海誠氏も、かつてファルコムに在籍していた経歴を持っています。ファルコムは1980年代にパソコンゲームとして「ドラゴンスレイヤー」「ザナドゥ」「イース」など数々のRPGを発売し、人気を博しました。中でもザナドゥは、日本のパソコンゲームとしては異例の40万本を販売しており、この売上は現在まで破られていないという事です。

なお家庭用ゲーム市場では、1986年にエニックスから「ドラゴンクエスト」が発売され、日本にRPGというジャンルを広めました。当時は家庭用のドラクエ・パソコンのファルコムで、RPG人気を二分していたという声もあった程です。

その後、ファルコムは家庭用市場にも進出を果たしましたが、パソコン市場のような華々しい活躍は出来ていません。社員数がわずか60名程度なので、年間のソフト発売数は2~3本しかなく、そのソフト売上も1作当たりせいぜい5~10万本程度であり、市場での存在感は希薄です。しかし実は、ファルコムはゲーム業界の中でも最も経営が安定している会社の一つです。以下は、ファルコムのここ10年間の業績推移を表したグラフです(ファルコムは9月決算なので既に2019年度まで確定しています)。

falcom_finance.png

売上高は毎年20億円前後と、大手サードパーティーの50分の1程度という小規模です。とはいえ業績は概ね右肩上がりで、経営状況は極めて安定しています。

そして一際目を引くのが、その利益率の高さです。一般的な企業(ゲーム会社以外も含む)の場合、利益率は10%前後になるケースが多く、任天堂の最盛期(DSやWiiがヒットしていた2008年)でも30%でした。それが近年のファルコムは利益率50%前後で推移しており、特に2019年度は60%という常軌を逸した割合になっています。これはつまり、コストをほとんど掛けずにゲームソフトを開発しているという事です。

近年のファルコムの発売タイトルは「イース」「英雄伝説」、そして英雄伝説から派生した「軌跡シリーズ」の3作(の続編)がほぼ全てであり、新規タイトルの開発は行われていません。これら3作は、グラフィックなどを過去作から流用するので、開発費がほとんど掛からずに済むのです。以前記事にしたコーエーテクモもリソースを使い回すメーカーの代表であり、無双シリーズなどを乱発して稼いでいますが、ファルコムはその究極系とも言えるでしょう。

しかも、ファルコムは基本的にPSハード以外でソフトを発売する事は無く、SwitchやXboxでの展開は行っていません。今年3月には閃の軌跡IIIがSwitchに移植される事になっていますが、開発は他社の日本一ソフトウェアが担当する事になっており、ファルコム自身は関わっていないという徹底振りです。他ハードへのマルチ展開をするにも多少のコストは掛かるので、それも省いてPSだけに注力するという点も、ファルコムのコストカットの一環です(ユーザー層もPSに合っているので戦略的にまあ正しいと考えられます)。

成功するか分からない新規タイトルに手を出すわけでもなく、海外市場を狙ってグラフィックに注力するという事もなく、とにかく身の丈にあった経営を第一に考えるというのが、ファルコムという会社の方針なのです。事実、ファルコムはゲーム業界で数少ない無借金経営会社です。

こうしたローコスト経営を貫いてきた事で、ファルコムは創業から38年間ずっと黒字経営が続いています。前述の通り、年間販売タイトル数が2~3作なので、ソフト発売の無い四半期では赤字になる場合が多いですが、年間を通しては必ず黒字を達成しているのです。ちなみに、ファルコムの創設者である加藤正幸氏へのインタビューによると、ファルコムの歴代ソフトで赤字だった作品は1本も無いという事です。
https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/180724

「ゲーム業界で最も潰れなさそうなメーカーランキング」があるならば、任天堂を抑えて1位に輝くのはファルコムだと思います。

正直なところ、流用ばかりで作りこみの甘いファルコムのゲームはクオリティが高いとは言い難く、一部の固定ファン以外には全く評価されていないのが実情です。「面白いゲームを生み出す事」がゲームメーカーの使命であるとするならば、それを出来ないファルコムに存在意義はありません。ですが会社にとって一番重要なのは「自社に利益をもたらす事」であると考えるならば、ファルコムは超優良企業です。ゲームユーザー目線と株主目線で、その評価が全く変わるのが、ファルコムの特徴です。

なお、近年のファルコムはライセンス収入でも大きな利益を上げています。ファルコムは中国ゲーム会社大手の「Changyou(暢游)」などとライセンス契約を結んだ事で、中国スマホ市場でも英雄伝説などが展開されるようになっています。

あくまでもライセンス契約を結んだだけなので、ファルコム自身は一切開発費を投じていませんが、暢游の稼いだ利益は相応のマージンとしてファルコムに支払われる事になります(仮に暢游が上手くいかずサービスが終了したとしても、ファルコムには特に損害は発生しません)。実際、2019年度のファルコムのライセンス収入はおよそ16億円であり、売上全体(24.5億円)のほぼ3分の2を占めているのです。コスト削減に力を入れているファルコムにとっては、ライセンスビジネスは究極の形なのでしょう。

とはいえ、今後もファルコムの経営が磐石であるかは不透明です。これまでファルコムは、家庭用市場でPSP及びVitaを主力ハードにしてきました。携帯機のグラフィックは、開発費をあまり掛けたくないファルコムにとって丁度良い性能でした。しかしソニーは任天堂に破れ、既に携帯機市場から撤退しています。PS以外にソフトを出す気が無いファルコムにとって、現状展開出来るハードはPS4しかありません。PS4のグラフィック性能はファルコムにとって過剰ですし、そもそも日本でPS4は売れていないという大きな問題もあります。そのため、近年のファルコムは赤字にこそなっていないものの、ソフト売上は激減しています。これが今後、ハードがPS5になって更に性能が上がる(そしておそらく売れない)のですから、先行きは不安しかありません。

また、現在好調のライセンスビジネスもいつまで続くか分かりません。スマホゲーム市場は移り変わりも早いですから、提携先がいつライセンス契約の更新を止めてもおかしくはないでしょう。

ファルコムが赤字に陥ったり、倒産する可能性は極めて低いと考えられますが、これまでと同じやり方が通用するかは疑問です。無謀な挑戦をしない事が心情のファルコムは、今後ゲーム業界をどう生き抜いていくのか、非常に興味深いです。

続・任天堂の業績予想
先週の記事で、今期から来期にかけての任天堂の業績は大きく伸びると推測しました。今回は、任天堂の業績が前回の予想を更に上回る可能性がある事について記述します。

任天堂の業績アップに繋がるであろう大きな要素は「ニンテンドーカタログチケット」です。これは今年5月16日から販売開始されたチケットで、簡単に言うとユーザーがSwitchのダウンロードソフトを安価に買えるという物です。



チケットは「ニンテンドーeショップ」もしくは「マイニンテンドーストア」から購入可能で、2枚セットで9980円です。チケット1枚に付き、任天堂のSwitch用ソフト(サードパーティータイトルは対象外)をどれでも1本ダウンロード出来ます。例えば「ゼルダの伝説BOW(定価7678円)」と「大乱闘スマブラSP(定価7920円」を購入する場合、普通に買えば合計15598円掛かりますが、カタログチケットを使えば9980円(5618円安い)で入手出来ます。このように、カタログチケットはおよそソフト1本分の代金が浮くという、極めてお得なサービスなのです。しかもカタログチケットは何度でも購入出来る(ストック出来るのは8枚まで)ので、ソフトを多く買うゲーマー程恩恵が大きくなります。

カタログチケットは、1枚だけでは販売されず、2枚セットになっている事がポイントです。どうしても欲しい1本だけでなく、買うかどうか迷っていた2番手3番手のソフトも売れやすくなるのは、非常に上手い販売戦略だと感じます。

ただしカタログチケットの購入は、ニンテンドースイッチオンライン加入者限定です。スイッチオンラインは、Switchのソフトでオンライン対戦などを行う際に加入が必須のサービスで、1ヶ月306円、12ヶ月セットなら2400円が掛かります。仮にSwitchでオンラインを利用するつもりが無いユーザーでも、カタログチケットを利用するために加入するという選択肢は充分考えられるでしょう。

任天堂はこれまでも、ゲームソフトのパッケージ版とダウンロード版の併売を行っていましたが、ダウンロード版の割合はおよそ10%と低めでした。パッケージ版と違い、ダウンロード版はROMの製造コストや小売・流通の取り分が不要なので、その分価格が安いのが通例です。実際、PSやXboxのダウンロード版は、パッケージ版よりも1割程度安くなっているケースが多いです。それに対し、任天堂ハードでは基本的にパッケージ版とダウンロード版は同じ価格に設定されています。これは「ゲームソフトの価値を下げない」「小売や流通を守る」という、任天堂の方針によるものです。価格によるメリットが無いため、これまでダウンロード版を選択するユーザーはあまり多くありませんでした。

しかしカタログチケット導入後、任天堂ソフトのダウンロード比率は大幅に上昇したという事です。任天堂の決算発表からの推計では「マリオメーカー2」や「FE風花雪月」の発売直後のダウンロード比率は約50%となっています(発売から時間が経つに連れダウンロード比率は下がる傾向があり、3ヶ月後には30%程度になっているとの事)。これまでのダウンロード比率が10%程度だった事を考えると、この伸び率は驚異的です。

そしてカタログチケットは、任天堂にとっても大きなメリットがあります。カタログチケットはソフトを安く買われるので、任天堂は損をすると思うかもしれませんが、ダウンロードソフトは利益率が極めて高いのです。パッケージソフトの場合、小売と流通の取り分が概ね50%弱あります。例えば7920円のスマブラSPのパッケージ版では、任天堂の粗利は4000円程度になります(ROMの製造費などもあるので儲けは更に少ない)。一方ダウンロードソフトの場合、これら小売や流通のコストが掛からないので、カタログチケット1枚分の値段4990円のほぼ全額が任天堂の粗利です(サーバー維持費は必要ですが)。よってソフト1本当たりの利益率は、20~30%も増加する事になります。

つまりカタログチケットは
・ユーザー=ソフトを安く買える
・任天堂=儲けが大きい

という、win-winの関係になっているのです。

一方、任天堂ソフトのダウンロード販売が増える事で、小売や流通は危機的状況に追い込まれるでしょう。まあ、任天堂は3DS&WiiU時代は赤字に苦しんでいましたし、いつまでも他社に気を使ってはいられないという事なのかもしれません。とはいえ、任天堂ソフトは子供へのプレゼント需要も高いので、パッケージソフトの販売がゼロになる事は考えにくいです(プレゼントがダウンロードソフトというケースは少ない)。ゆえに、今後もゲーム取扱店は何とか細々と生き残っていくのではないでしょうか。

ちなみに、もしライバル社であるソニーが同様のチケットを販売したとしても、上手くいく事は無いと思われます。PSソフトはすぐに値崩れする上、中古での出回りも多いため、チケットを使うよりも安く買えるからです。カタログチケットは、ソフトの値崩れが少なく、中古でも高めの価格を維持している、任天堂ハードだからこそ成立する仕組みと言えるでしょう。

このカタログチケット効果を踏まえると、今期から来期に掛けての任天堂の業績(特に営業利益)が大きく伸びる可能性は高いです。任天堂の業績のピークは、DSやWiiがヒットした2008年(売上高1兆8386億円/営業利益5552億円)ですが、2020年度はそれを上回る過去最高を記録出来るかもしれません。

任天堂の業績予想(後編)
前回、任天堂の業績がSwitch発売後に大きく回復している事について述べました。

nintendo-finance.png

そして3つの理由から、今後更に業績を伸ばしていくであろうと予想しました。その一つめの理由は前回書きしましたが、Switchは日本だけでなくアメリカやヨーロッパなど世界中で好調な売れ行きになっており、その勢いは昨年を大きく上回っている=今後更なる市場拡大が期待出来るという事でした。今回は、残り二つの理由について記述します。
前編はコチラ:任天堂の業績予想(前編)

任天堂が業績を伸ばすと予想している二つめの理由は、中国進出です。任天堂は今年の12月10日より、中国のゲーム会社テンセントと提携し、中国市場でのSwitch販売を開始しています。中国の人口はおよそ13億8000万人で、日本の10倍以上となる超巨大市場です。

しかしこれまで、任天堂・ソニー・マイクロソフトのハードメーカー3社は、いずれも中国で大きなマーケットを築く事は出来ていませんでした。中国では、青少年の精神に悪影響を与えるとして、2000年よりビデオゲーム機の製造と販売を禁止する措置がとられており、正規のルートで任天堂やソニーのゲーム機を売る事は許可されていませんでした(2014年から制限は緩和)。

そして中国市場は、著作権意識が低いために海賊版が横行しており、正規のパッケージソフトを販売する事は極めて困難という問題もあります。そのため、中国のゲーム市場は月額利用料などを確実に徴収出来る、パソコンやスマホゲームが99%を占めているのです。

また、中国ではコンテンツの検閲が厳しく、残虐描写などがあるゲームは販売が許可されません。例えば、海外で人気の高いジャンルであるFPSは、中国での販売は事実上不可能です。実際、カプコンの人気作「モンスター・ハンター・ワールド」は、中国での発売直後に多数の苦情を受けたために、販売差し止めになっています。

このように、中国でのゲーム販売は一筋縄ではいかない難しさがあります。とはいえ、任天堂が中国で成功出来る可能性は充分あると推測します。中国で海賊版が横行しているのは、国民の著作権意識が低い事もありますが、単純にお金が無いので、安価な海賊版に手を出すしかないという理由が大きいと思われます。ですが近年の中国は富裕層が増加傾向にあり、その数は1億人以上(日本の人口とほぼ同じ)とも言われています。富裕層が増えてくれば、必然的に正規品を買う人が多くなるので、中国でSwitchを販売していく事は不可能ではないでしょう。検閲についても、任天堂ソフトは過度な残虐描写はほぼありませんし、主力ソフトを中国で展開する事に問題はなさそうです。

なお中国でのSwitchは、1サイトで10万の予約(開始9時間で)があったという事で、その注目度は高いです。ただ、中国でSwitchを取り扱うサイトは2つしかないという話もあり、この数字だけでは人気を計るのは難しそうです。比較対象として、中国市場におけるソニーのPS4は、4年で100万台しか販売されていないという事なので、Switchはそれ以上の普及ペースになる可能性は高そうです。世界一の人口を誇る中国市場で、任天堂がSwitchを普及させる事が出来れば、業績は大きく伸びていくでしょう。


三つめの理由は、ゲーム事業以外の収益拡大です。任天堂は11月22日に、渋谷PARCOに「Nintendo TOKYO」をオープンしました。これは、スーパーマリオやゼルダの伝説など、任天堂のキャラクターグッズを販売する施設で、開店日には数時間待ちの行列が出来ていました。任天堂はディズニーに匹敵する程の、世界でも有数のキャラクターブランドを持っており、熱狂的なファンも数多いです。現在は東京のみですが、今後は大阪・名古屋・札幌・福岡など都市部にも展開していけば、より多くの客を呼び込めるようになるでしょう。

そして来年には、USJ内に任天堂のキャラクターや世界観を題材にしたテーマパーク「SUPER NINTENDO WORLD」がオープンします。繰り返しになりますが、任天堂のキャラクターブランドは世界でもトップクラスに人気が高く、そのテーマパークには大きな可能性を秘めています。2020年は東京オリンピックとの相乗効果で、世界中から大勢の客が詰め掛ける事が予想されます。

これまでの任天堂は、ゲーム事業以外の分野に消極的でしたが、今後はそのキャラクターブランドを活かした展開を行う事で、ゲーム開発以外の面でも売上を伸ばしていけると推測します。


以上をまとめると
理由1:Switchは世界的に人気が高まっている
理由2:中国進出で更なる市場拡大が狙える
理由3:ゲーム事業以外での収益も増える

という事で、来年以降も任天堂の業績は拡大していくのではないでしょうか。


これらを踏まえた上で、実際に任天堂の業績がどの程度になるのか、2019年度と2020年度の予測をしてみます。2019年度については、理由2と3は影響が少ない(期間が短い)と考えられるので、単純に現状のSwitchの勢いから判断するしかないでしょう。2019年度の上半期の数字は判明しているので、そこから下半期の売上を推測します。

任天堂の2018年度の上半期は、売上高3800億円、営業利益610億円でした。そして2018年下半期は、売上高8200億円、営業利益1890億円です。つまり前年度は売上高が「上半期30%:下半期70%」で、営業利益が「上半期:25%:下半期:75%」の比率になっていたという事です。2019年度も同様になると仮定すると、上半期の売上高が4440億円、営業利益が940億円なので、年間の売上高はおよそ1兆5000億円、営業利益は3800億円程度になると推測されます。

なお、2020年度の業績については大部分を予想(妄想)するしかありません。ハードを大きく牽引するには、多くの人にアピール出来る魅力的なソフトが不可欠ですが、現時点では2019年度末に発売される「あつまれどうぶつの森」以外のビッグタイトルは発表されていないのが懸念材料です。とはいえ、現在の任天堂はハードをSwitch一本に絞っているので、今後も多数のタイトルが発売されるはずで、ソフト不足に陥る心配は無いと思います。仮に、2020年度も今年度と同程度の比率で伸びるとすると、売上高は1兆8000億円、営業利益5700億円となり、DSやWiiのピーク時だった2008年度に迫る業績になります。

この予想が概ね正しいならば、任天堂の活躍によって、縮小の続く家庭用ゲーム市場の復活も狙えるかもしれません。

任天堂の業績予想(前編)
先週・先々週で、Switchが国内累計販売2000万台を達成出来るかという点を考察しました。そしておそらく、それは可能だろうという結論になりました。即ち、今後の任天堂の業績は大きく伸びていくと予想します。

以下は、ニンテンドーDSが発売された2004年以降の、任天堂の業績を表したグラフです。

nintendo-finance.png

任天堂が2004年に発売した「DS」そして2006年発売の「Wii」は、二画面タッチパネルやWiiリモコンといった直感的な操作形態が特徴であり、これまであまりゲームに触れてこなかった高齢者などにも普及し、ゲーム人口の拡大を実現しました。中でも、2006年に発売されたDSLiteは、日本だけで年間約900万台を販売するという、すさまじい勢いがありました。この直後の2007年~2009年頃が任天堂のピークであり、ゲーム業界全体も大いに賑わっていました。

しかし、2011年から任天堂の業績は低迷します。同年発売された3DSは、25000円という高めの価格だったため、当初は売れ行きが伸び悩みました。また発売直後に東日本大震災が発生したため、ソフト発売が延期されたり、世の中が自粛ムードになった事も、不振に陥った原因です。その状況に危機感を覚えた任天堂は、半年後に3DSの1万円値下げに踏み切り、またマリオカート7など人気タイトルを多数発売した事で、3DSの販売は好調に転じました。しかし、その代償である1万円の値下げは業績に重くのしかかり、任天堂は上場以来初の赤字に陥ったのです。

しかも、翌年発売されたWiiUは世界的な売上不振で、任天堂は3年連続の赤字という更なる危機的状況に追い込まれたのです。この3DS発売からの数年間は、任天堂にとって正に暗黒の時代だったと言えるでしょう。

そんな任天堂の業績は、Switchが発売された2017年以降復活しました。流石にピーク時の2007~2009年度には及ばないものの、それに迫る売上高1兆円以上を記録しています。営業利益率も全盛期に匹敵する20%以上になっており、極めて好調な経営状態である事が分かります。

なお、家庭用ゲーム市場は長らく低迷が続いていましたが、Switch発売後は若干回復傾向にあります。家庭用ゲーム市場規模は、任天堂の業績とほぼ比例しており、任天堂がゲーム市場に与える影響力が極めて高い事が分かります。

game_kibo_96-18.png

個人的には、任天堂の業績が今後も伸びていく理由は3つあると考えています。

まず一つめの理由は、Switchの人気が世界的に高まっている点です。Switchは発売直後から好調に推移していましたが、今年はこれまで以上に売上を伸ばしている国が多いです。例えば日本では、2017年・2018年共に、Switchの年間販売台数はおよそ350万台でしたが、2019年は現在のペースだと450万台程度になるので、前年比100万台のプラスです。ノーマル版のSwitchの販売数は昨年とほぼ変わりないですが、9月に発売された携帯専用のSwitchLiteの台数が上乗せされているため、合計で大きく売上を伸ばしているのです。ノーマル版とLiteで需要を潰しあっていない、理想の状況が作られているのです。

また今年のアメリカでは、ブラックフライデーの1週間でSwitchが83万台販売されており、これは2009年のDS(週間販売89万台)に迫る、歴代最高クラスの売上です。日本だけでなく、アメリカやヨーロッパなど世界全体で好調である事が、Switchの大きな強みです。

実際、任天堂の決算発表によると、2019年度第一四半期のハード販売台数は213万台(前年同期比13.2%増)、ソフト販売本数は2262万本(前年同期比25.9%増)と好調です。そして第二四半期は、ハード693万台(前年同期比36.7%増)、ソフトは5849万本(前年同期比38.8%増)となっており、いずれも前年を大きく上回る業績になっています。この様子だと、2019年度の業績はWii・DS時代に匹敵する数字になりそうです。

その上、ライバルであるソニーやマイクロソフトが、2020年末に新ハードを発売すると発表している事も、Switchにとって好都合です。次世代機が出るまでの1年間は、現行機であるPS4およびXboxOneの買い控えが起きると考えられるので、結果的にSwitchの独壇場になるという事です。ゆえに、Switchは値下げして利益を減らすような戦略が必要なく、来年も高い営業利益率を維持出来るでしょう。

そもそも、日本のゲーム市場では既にSwitchの完全なる一強状態に突入しています。例えば、11月18日~11月24日の週間ハード販売台数は、Switchが約18万台、PS4を含めたその他ハード合計が約8000台なので、Switchの割合は95%に上ります。おそらく、ゲーム業界の歴史において、一つのハードの占有率がここまで高かったのは、ファミコン初期ぐらいしか無いと思われます(任天堂はPSに負けていた時代も携帯機が強かったので、PS独占状態にはなっていませんでした)。
https://www.famitsu.com/news/201911/27187807.html

また12月2日~12月8日のPS4は、年末商戦(+amazonの投売り効果?)でハード販売台数が4万台にまで増えましたが、ソフト販売ランキングのトップ10にPSソフトは1本も入っていないという異常事態になっています。ろくにソフトも買わず、ハードだけ買う意味は何なのか、相変わらずソニーハードの売上は奇妙ですね。
https://www.famitsu.com/news/201912/11188772.html

このように、日本市場では最早PS4の存在感は皆無に近いです。この酷い売上が今後1年も続く(むしろ来年は更に悪化する可能性が高い)というのは、ソニーにとって悪夢のような状況です。しかも、日本市場のPSはスロースターターなので、1年どころか3年程度は冬の時代が続くと予想されます。ライバル不在のSwitchが、来年以降も好調な売上になるのは必然ではないでしょうか。

(後編に続く)

続・コーエーテクモの業績と今後
先週記事にした通り、ここ5年間のコーエーテクモの業績は安定しています。

koeitecmo_finance.png

そんなコーエーテクモの株価は、ここ数年好調な推移を続けています。2013年頃の株価は500円程度でしたが、2019年現在では約2500円と、およそ5倍にまで上昇しています。

koeitecmo_stock.png
※データ元:Yahooファイナンス

仮にコーエーテクモの業績が右肩上がりになっているならば、株価が好調なのも納得です。しかし実際は、業績は安定しているものの伸びてはいないので、それで株価が5倍になるのは不自然に思えます。なお、2013年~2019年で日経平均株価はおよそ2倍になっているので、コーエーテクモも株価が上がるのは当然ですが、その上昇率がかなり大きい事が分かります。しかも大幅に下落する事無く、株価がずっと上がり続けているというのは極めて珍しいです。

コーエーテクモという企業の特徴として、資産の多くを投資有価証券で占めている事が挙げられます。2018年末時点でのコーエーテクモの総資産はおよそ1300億円ですが、その内の投資有価証券は約760億円です。つまり、会社の資産の6割近くを、株式や債券などの投資に使っているという事です。こうした経営戦略は、バブル時代の財テク企業を彷彿とさせます。

コーエーテクモの投資有価証券の比率が如何に高いかを示すために、他のゲーム会社と比較してみました。
(2018年度末時点)
企業名総資産投資有価証券比率
コーエーテクモ1292億円764億円59.1%
カプコン1234億円6億円0.5%
スクエニ2779億円12億円0.4%
ガンホー960億円7000万円0.07%
任天堂1兆6903億円1671億円9.9%

ほとんどの会社が1%以下であり、高めの任天堂ですら10%に届いていません。こうして見ると、コーエーテクモの59%がメチャクチャ高い事が分かります。

有価証券の保有について

当社グループでは、エンタテインメント事業等の開発投資、事業投資に対処するために、現預金や換金性の高い有価証券を保有しております。これらの資産は国内外の株式や債券等に投資し、安全かつ効率的な資金運用を行っております。
https://www.koeitecmo.co.jp/ir/corporate/risk/


一般的なゲーム会社は、ゲーム事業で得た利益を、新たなゲームの開発費用に充てています。一方コーエーテクモは、利益をゲーム事業にはあまりつぎ込まずに、他の会社(ゲーム会社以外も含む)への投資に使っているという事です。おそらく、コーエーテクモは自社のゲーム開発力の限界を認識しており、これ以上無理にゲーム事業を拡大するよりも、成長の見込める他の会社へ投資した方が儲かると判断し、こうした経営を行っているのだと推測されます。

ちなみに、コーエーテクモの資産運用の責任者は、代表取締役会長である「襟川恵子」女史です(創業者である「襟川陽一」氏の妻)。彼女は学生時代から株式投資を行っており、その経験がコーエーテクモの資産運用に活かされているという事です。

実際、コーエーテクモは投資によって大きな利益を上げています。売上高や営業利益は毎年ほぼ変わっていませんが、投資事業などを含んだ純利益は年々増加しています。

koeitecmo_finance2.png

つまりコーエーテクモは、ゲーム事業は既に頭打ちであまり成長していないものの、その分投資に力を入れる事で利益を上げているのです。こうした点が投資家達に評価されているため、株価が好調に推移しているのだと考えられます。

ゲーム会社がゲーム以外の事業に注力しているのはどうかと思いますが、家庭用ゲーム市場の縮小が続く中で生き残るには、こうした経営戦略も必要なのかもしれません。

コーエーテクモの業績と今後
コーエー(2010年にテクモを吸収合併)は、ファミコンが発売された1983年よりも前から、パソコンゲーム市場で活躍していた老舗のゲームメーカーです。ゲーム会社としては珍しい無借金企業であり(他には任天堂や日本ファルコムなど)、非常に堅実な経営を行っている事で知られています。そんなコーエーテクモの、近年の業績をグラフ化しました。

koeitecmo_finance.png

ここ5年間、コーエーテクモの売上高は380億円前後でほぼ一定です。営業利益も触れ幅は小さく、概ね100億円前後となっています。コーエーテクモは不動産事業なども行っていますが、その規模は小さく、売上のほぼ9割はゲーム事業が占めています。つまり、コーエーテクモのゲーム事業はほとんど伸びてはいないものの、経営状況は極めて安定していると言えるでしょう。無理に開発規模を拡大する事無く、身の丈に合った経営を行うという方針が、コーエーテクモの特徴です。

以前、カプコンの業績について記述しましたが、カプコンはモンハンシリーズを世界的な人気作にするため、海外受けするようにグラフィックに力を入れて開発を行い、結果世界全体で1300万本以上を販売するという成功を収めました。ハイリスクハイリターンのカプコンと、安定第一のコーエーテクモは、正に対照的な存在と言えそうです。

コーエーテクモの経営が安定している理由の一つが「コーエー商法」とも揶揄されるソフトの使い回しです。コーエーテクモと言えば「信長の野望」「三國志」「無双シリーズ」など、歴史系のゲームを多く生み出している事で有名です。これらのソフトは、1作開発しただけでは終わらず、グラフィックやサウンドなど素材をほぼ使い回し、キャラクターやイベントなどを多少追加しただけの作品を新作として発売するのが恒例になっています。つまり、開発費は1作分+αで、2作、3作…と何度もソフトを発売するという戦略です。こうした使い回しを行っているゲーム会社は珍しくはありませんが、その中でもコーエーテクモのやり方が最もあくどいという口コミが多いです。

特に無双シリーズについては、自社ブランドの三國無双や戦国無双だけでなく、他社の作品とコラボした「ガンダム無双」「ワンピース海賊無双」「ゼルダ無双」などもあります。これらのゲーム内容に多少の差はあるものの、ベースとなる一騎当千の爽快感を追求したシステム部分は全て共通です。ゆえに、見た目のガワだけ変えてちょっとオリジナル要素を加えれば新作になるという、コーエーテクモにとって極めて効率的なソフト開発になっています。人気作とのコラボとしては、北斗無双が55万本、ワンピース 海賊無双が82万本、ドラゴンクエストヒーローズが78万本など、高い売上が見込めるというメリットもあります。

実際、コーエーテクモの中でも無双シリーズは特に使い回しが多いです。以下は、コーエーテクモの代表作の年間発売タイトル数を表したものです。

無双シリーズ信長の野望三国志
2018年4作0作0作
2017年5作2作1作
2016年6作3作2作
2015年6作3作1作
2014年9作5作0作

※家庭用ソフト限定、パソコンやスマホタイトルは含まない
※複数のハードで発売されたタイトルの場合、発売日が同じならば1作としてカウント
※後に完全版が出たり他ハードで発売された場合は別ソフトとしてカウント
※他社とのコラボ作も含む

信長の野望は毎年2~3作程度、三國志は概ね年1作のペースで発売されています。新作になってもゲーム内容に大きな変化が無いにも関わらず、これだけ何作も発売されてるのは、やはり多すぎだと感じます。また、上記表には記載していませんが「Winning Post」や「金色のコルダ」もこの5年間毎年発売されており、コーエーテクモの使い回し体質は歴史ゲームだけでない事が分かります。

そしてそれ以上に、無双シリーズの乱発には驚かされます。特に2014年は9作も発売されており、ほぼ毎月のように無双タイトルが出ていた計算になります。とはいえ、近年はそのペースも年間5作程度に落ち着いています(それでも多いですが)。そんな歴代の真・三國無双シリーズ(完全版などは除く)の売上は以下の通りです。

タイトル発売日ハード販売本数
真・三國無双2000年8月3日PS233万本
真・三國無双22001年9月20日PS2104万本
真・三國無双32003年2月27日PS2118万本
真・三國無双42005年2月24日PS291万本
真・三國無双52007年11月11日PS3・36042万本
真・三國無双62011年3月10日PS348万本
真・三國無双72013年2月28日PS330万本
真・三國無双82018年2月8日PS416万本

※データはメディアクリエイトとファミ通が混じっているので注意!

PS2が発売された2000年、当時はPS2のハード性能を美麗グラフィックの表現に用いたメーカーが大半でした。そんな中コーエーが生み出した真・三國無双は、グラフィックはそこそこに抑えつつ、画面内に多くの敵キャラクターを表示させる事にハードパワーをつぎ込んだのです。その結果、真・三國無双は大勢の敵をなぎ倒す爽快感を味わえるゲームとして人気を博しました。翌年発売された真・三國無双2は、キャラクターをフルボイス化するなど内容を大幅にパワーアップした事で、累計販売本数は100万本を突破、コーエーとして初のミリオンタイトルとなりました。無双シリーズの成功で、コーエーのゲーム事業は大きく躍進したのです。

そんな真・三國無双も、シリーズを重ねる毎に売上は低下し、最新作8の売上はわずか16万本まで落ち込んでいます。これは、家庭用ゲーム市場全体が縮小している事や、ライバル社のカプコンが無双と似たゲーム「戦国BASARA」を展開するようになって人気が分散した、などの理由もありますが、それよりもシリーズを乱発しすぎたために飽きられている事が大きいと考えられます。ちなみに、最新作の真・三國無双8はシリーズ初のオープンワールドになり、ゲーム内容は大きく生まれ変わりましたが、完成度が低かったために売上は過去最低となっています。ユーザーにとっても、無双シリーズは変わらない事が魅力なのかもしれません。

なお、コーエーテクモによる今後の見通しは「販売本数が全世界で500万本級のパッケージソフト」「売上が月商10億円を超えるスマホゲーム」の創発を目指すとしています。とはいえ、コーエーテクモが500万本以上売れる家庭用ソフトを作るのは厳しいと思われます。コーエーテクモの近年で一番売れたタイトルは「仁王」の250万本ですから、その2倍の売上の作品を生み出すのは容易ではありません。仁王は最初の発表から発売まで12年も掛かった(ほとんどの期間は開発休止していたと思われますが)異例のタイトルなので、その2倍売るには相当の作り込みが必要となるでしょう。そもそも、コーエーテクモは500万本売れるソフトを出したいと言っているだけで、そのためにどんなゲームを作るのかという具体的な案は全く示されていません。単なる願望だけでは、世界でヒットする作品は生み出せないでしょう。

それに比べれば、月商10億円のスマホゲームならまだ可能性はありそうです。現在、コーエーテクモ自身のスマホゲーム市場での目立ったヒット作はありませんが、自社のIP(三國志やアトリエシリーズetc)を中国や韓国など海外の会社に貸し出す、ライセンスビジネスでは大きな利益を上げています。今後コーエーテクモがスマホゲームでもヒット作を生み出していければ、経営状況は更に磐石となりそうです。

カプコンの業績と今後
近年、業績が好調なカプコン。2014年度は大幅に売上を落としていますが、以降は右肩上がりで業績を伸ばしており、2018年度は5年ぶりに売上高1000億円を超えました。
http://www.capcom.co.jp/ir/finance/generators.html

capcom_finance.png

2014年度の低迷は、期間内の大型タイトルが3DSのモンスターハンター4Gしか無かった事が大きな理由です。近年のカプコンは新規タイトルが極めて少なく、モンスターハンターやバイオハザードなど、既存の人気作の続編ばかりを開発しています。つまり、発売するタイトル数を少なく抑え、その分一作当たりの売上を増やす事で利益を上げるという戦略です。ゆえに、開発の遅れなどでソフトを計画通りに発売できないと、業績にも大きな影響が出るのです。

以前のカプコンは、一部のソフト開発を外注先に丸投げしていたために、制作の遅れやクオリティの低下に繋がり、計画通りのタイミングで発売できないケースが多くなっていました。そこで2012年頃から開発体制の見直しを進め、ソフトの内製率を高める方針を打ち出していました。2014年度は、3年前と比較して開発スタッフを500人増員、またソフトの内製率を50%弱から70%にまでアップさせたのです。2014年度の売上高は前年度から400億円減少したにも関わらず、営業利益が微増しているのは、こうした構造改革の結果です。その後も業績が好調に推移しているのは、この開発体制見直しの効果が大きいと推測されます。



なお、カプコンの2019年度以降の大まかな事業見通しは以下の通りです。
・今後はAIやVRなどハイテク化が進んでいくので、それに対応したゲーム開発を行う。
・ゲーム以外のコンテンツとの相乗効果で売上を伸ばす。例えばモンハンやロックマンは実写映画の製作が進んでいる。
・日本の家庭用ゲーム市場は頭打ちしているので、海外市場に注力していく。
・急成長しているeスポーツ市場へ積極的に展開していく。

AIやVRといった最新技術を活かしたゲームには大きな可能性があると思います。とはいえ、VR普及の立役者になるはずだったソニーのPSVRは、生産体制の不備で充分な供給ができず、世の中のVR熱は完全に冷めてしまいました。一度コケたVR市場が今後盛り上がる事は期待薄であり、これを事業の柱にするのは無謀でしょう。

新規作は少ないカプコンですが、既存の人気タイトルは多いので、それを活かして幅広いコンテンツを手掛けるのは良いと思います。ですが、ゲームの映画化の成功例は少なく(スーパーマリオ・ファイナルファンタジー・ドラゴンクエストなど失敗作は多い)、カプコンのバイオハザードは極めて稀なヒット作です。ゆえに、モンハンやロックマンの映画が成功する可能性は低いと思います。

日本の家庭用ゲーム市場は大きく縮小しているので、国内ゲームメーカーにとって海外展開は不可欠です。カプコンのモンハンシリーズはこれまで日本でしか売れていませんでしたが、2018年1月にPS4で発売したモンハンワールドは世界全体で1300万本出荷という大ヒットを記録しました。この結果からすると、カプコンの海外戦略は大成功しているように見えますが、先週当ブログで記事にしたように、モンハンワールドは実際そこまで売れてはいないという噂もあります。そのモンハンワールドの拡張コンテンツであるアイスボーンはあまり売上が伸びていませんし、カプコンが真に海外市場で成功するのは中々難しいかもしれません。

カプコンにとってのeスポーツは、既にストリートファイター5で一定の結果を残しています。ですが格闘ゲームは世界的に斜陽のジャンルで、大会の規模もそれ程大きくありません。ストリートファイターの世界大会「カプコンカップ」2018年の優勝賞金は25万ドル(約2800万円)でした。一方、eスポーツの世界ではもっと賞金額の大きい大会は数多くあり、例えば今年8月に開催された、ストラテジーゲーム「DOTA 2」の世界大会の優勝賞金は1560万ドル(約17億円)でした(チームプレイのゲームなので一人当たりの賞金は約3億円)。このように、ストリートファイターはeスポーツ界では小粒のタイトルです。カプコンがeスポーツ市場で飛躍するには、ストリートファイター以外の作品でも存在感を示していく必要があるでしょう。



ところでカプコンに限らず、近年の家庭用ゲーム市場では、どのメーカーも新規作品は少ないです。その大きな理由が、ゲームハードの進化に伴って、ソフト開発費および開発期間が増大した事です。近年のゲームソフトは、ビッグタイトルの場合は開発費数十億円というのが一般的で、海外の大手メーカーの場合は100億円を超えるケースもあります。これだけ開発費が膨大だと、絶対に失敗する事はできないので、売れるかどうか分からない新規作を開発する事は難しいです。ゲームメーカーはこうしたリスクを減らすために、ある程度の売上が見込める、既存シリーズの続編に注力するケースが多くなっているのです。

とはいえ、カプコンは他のメーカーと比較しても特に新規作が少ないメーカーです。家庭用のパッケージソフトに限定すると、最も新しい新規タイトルは2013年12月に3DSで発売したガイストクラッシャーです。つまりカプコンは、この6年近く新規ゲームソフトを作っていない事になります(ダウンロード用ソフトやスマホゲームは新規作もあります)。人気作の続編を出す事は決して悪いわけではありませんが、既存のシリーズ物ばかり出していると市場は先細りしていくだけであり、ユーザー層拡大のためには新規作の開発は不可欠です。

また、近年の家庭用ゲームメーカーの多くはスマホゲームで大きな利益を上げていますが、カプコンはスマホ市場で目立ったヒット作を生み出せていないという問題もあります。個人的には、ガチャ課金で暴利を貪るスマホゲームのビジネスモデルは好きではありませんが、ゲームメーカーに多大な利益をもたらす市場である事は確かです。縮小の続く家庭用ゲーム市場で勝負するしかないというのは、カプコンの大きな弱点と言えます。

数字だけ見れば、カプコンの業績は好調に推移していますが、実はモンハンやバイオなどの人気作に依存せざるを得ない、極めて危うい状況であると感じます。



プロフィール

HDR

Author:HDR
筆者のwebサイトはコチラ
ゲーム業界.com
クイズコーナーも開設しています

FC2カウンター

最新記事

おすすめ記事

カテゴリ

にほんブログ村

にほんブログ村 ゲームブログ ゲームの世界観へ

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR